全国で唯一、店内に本の閲覧コーナーがあるという 国分寺のコメダ珈琲に来てみると、昭和19年発行、昭和48年に復刻された一冊の短編集が置かれていました。作者は小豆島出身で『二十四の瞳』の壷井榮。美しい装丁の絵は、当時の瀬戸内の島の風景を描いたものでしょうか。

短編集の最後にある表題作『夕顔の言葉』には、出征した兄を待つ妹と母の暮らしが描かれています。戦地へ行った兄の願いだった夕顔の花を咲かせ、その押し花を戦地へ送った直後、しかし二人は兄の戦死の知らせを受け取る…
兄の訃報を受けた妹が教師になる夢を諦めて、工場で働こうかと思いながら、花を終わらせた庭先の夕顔を見ると、次の命に備えて育った沢山の種が、無言の言葉をなげかけているようだった。
この『 夕顔の言葉 』は、次の世代、そしてその次の世代にも、この種を広げて欲しいと願う、壷井榮自身のメッセージだったのかもしれません。
この図書コーナーの選書は、高松の古書店『なタ書 』店主 の藤井さんが担当されたそうです。
